【抽選販売商品 4月24日出荷予定】
CULT取扱商品の購入に対して、明らかな転売業者からの介入があったため、この商品の販売は抽選方式とさせていただきます。購入を希望される方は2021年 4月1日(木)〜 4月18日(日)の期間中に以下のお申し込みフォームにてご応募いただき、厳正なる抽選の結果、当選された方にご購入いただく形となります。
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→ご応募は締め切り、厳正なる抽選の結果、当選された方々のみへ「info@cult-pedals.com」よりメールをお送りいたしました。迷惑メールフォルダなどもご確認ください。
製品の注目度が非常に高く、当選確率が1%を切るような倍率となってしまいましたが、まずはたくさんのご応募ありがとうございました。記入は任意だったご意見、ご要望の欄に温かいお言葉を頂くことが多く、とても深く感銘を受けています。ご当選とならなかった方が多くいらっしゃいますが、ご意見やご要望は全て目を通しております。
また、アップロードしていただいた楽器の写真も楽しみに拝見しておりました。中にはかつて所有していた個体(エフェクター)などもあり、単に楽しい以上に様々な驚きがありました。今後とも皆様を楽しませられるであろう企画を用意して参りますので、変わらずCULTをご愛顧いただければ幸いです。
これがBOSS Waza Craftシリーズ史上、最異端作と言って差し支えないでしょう。現ペダル業界で世界最大のシェアを持つ一大メーカー“Boss”、そして1960年代から歴史的名機を数多く輩出しているイギリスの伝説的ブランド“Sola Sound”、両者をダブルネームで起用したファズペダル、
TB-2W Tone Benderです。
このTB-2Wを説明するにあたって、まず『Tone Benderとは一体なんなのか?』ということに触れる必要があるでしょう。なぜなら、Tone Benderは“Tone Bender”の一言で片付けられるほど、単純明快なエフェクターではないからです。
Tone Benderとは、1965年にイギリスで生まれた、とあるファズペダルの名称です。そのファズペダルの設計者であり、Tone Benderの名付け親でもあるのは、当時フリーランスの身であったイギリス人のエンジニア、Gary Hurst。それ以前はAC30などのアンプで知られるVOXブランドを所有していたJMI(Jennings Musical Industiries)に勤め、アンプの回路の一部や、エコーマシンなどのエフェクターを設計していた人物です。Gary Hurstは当時、ロンドンのデンマーク・ストリートにあった楽器店“Macari's Musical Instruments(以下、Macari's)”の店内に自身の作業場を構えており、当初のTone BenderもMacari'sに修理品として持ち込まれたMaestro FZ-1を元にしたものでした。
▲1958年からロンドンに店舗を構えるMacari'sは現在、創業者の子孫に代替わりをしながら経営を続けている。(2019年12月撮影。同店舗は2020年に閉店)
▲ 左が現Macari'sの店主 Anthony Macari
前述の店舗を間借りしていたようなエピソードの通り、Gary HurstとMacari'sとの関係性が深かったことから、この最初期のTone BenderはMacari'sが所有するブランド“Sola Sound”から発売され、少数ながらイギリス国内で流通したのでした(Sola Sound名義以外のものもわずかに存在しています)。
その後、1966年にTone BenderはGary Hurst自らの手によって2度、大幅な変更が加えられ、最初期のTone Benderとは全く違うものへ生まれ変わります。
1度目の変更は回路全体、筐体のデザインや製法にまで及び、2度目の改良でより完成度の高い、洗練された回路へ進化しました。この2度目の改良によって生まれたTone Benderは、“Tone Bender Professional MK.II”というモデル名が与えられ、それ以前の2種類のTone Benderは現在、Mk.I、Mk.1.5と呼ばれています。
▲ Macari'sのAnthony Macariが所有するSola Sound Tone Bender Professional MK.II。リプロダクト品と見間違える様なコンディションだが、1966〜67年製のオリジナルである。なお、
現存が確認できている同モデルは数十台のみ。
Professional MK.IIの発売以降、全く内容の異なる後継機種“Tone Bender Mk.III”、同“Mk.IV”への仕様変更、そしてSupa Tone BenderやJumbo Tone Benderなどの多くのバリエーションモデル、EME/JENによる同名のイタリア製モデル、他メーカーへのOEM生産モデルが生まれたことにより、Tone Benderの系譜は複雑さを極めます。事実、その複雑さゆえにTone Benderと聞いてイメージするモデルは個人によって異なることが多く、それら全てを“Tone Bender系”と一言に纏めてしまうことは難しいと言えるでしょう。しかし、1960〜70年代に作られたオリジナルと呼ぶべきイギリス製のTone Benderは全て、Sola Soundによって作られたものであり、現在もMacari'sが“Sola Sound”と“Tone Bender”の使用権利を所有し、正統なリプロダクション、後継モデルを販売しています。
併せてMacari's のウェブサイトもご覧ください
▲ 左からCULTが所有する1968年製のTone Bender Professional MK.II、TB-2W、そしてTB-2Wのリファレンス用としてMacari'sから直々にBossへ貸与されたTone Bender Professional MK.II
その複雑なTone Benderファミリーの中で特に人気であり、最も高い知名度を誇るのは、このBOSS TB-2Wの元となったモデル、Tone Bender Professional MK.IIです。オリジナルは1966年後半から1968年までのわずか2年弱の間に販売され、同時に生産数自体も多くはなく、世界中に現存する数はOEM生産モデルを含めても100台に満たないと言われています。しかし、1960〜70年代にかけてイギリスで活躍したギタリストの多くに使用され、特にLed ZeppelinのJimmy Pageがキャリア初期に愛用したことで広く知られています。
Tone Bender Professinal MK.IIの回路は、ゲルマニウム・トランジスタを使用した3つの増幅段で構成されています。同年に先行して発売されたMk. 1.5がFuzz Faceに酷似した2つの増幅段で構成された回路だったことに対し、Professional MK.IIはそのMk. 1.5の回路に増幅段を1段増やし、より高い歪み量とサステインを会得したものでした。“Fuzz Face + α”程度のシンプルな回路でありながら、意外にも同様の回路構成のファズは他にはほぼ無く、偶然であったとしても高いオリジナリティを具え、同時に同年代のファズと比べて安定性や完成度も高いと言えます。
そして、その回路構成は
このBoss TB-2Wでも完全に踏襲されています。
海外の工場で大量に眠っていたNOS品のゲルマニウム・トランジスタのウェハー(いわばトランジスタの中身)を再利用し、このプロダクトのためだけにゲルマニウム・トランジスタを調達。そして、それら
大量のゲルマニウム・トランジスタの中から、日本に在住するBossのエンジニア達が手作業によって選別されたものが、このTB-2Wに搭載されています。使用されたトランジスタはTB-2Wの個体ごとに管理されており、Bossには個体のシリアルナンバーと、その個体に使用されたトランジスタのデータが紐づけて保管されているそうです。
しかし、TB-2WはTone Bender Professional MK.IIの複製を目指したものではなく、あくまでもBossが解釈した
Tone Bender Professional MK.IIの再現であり、例えば回路をそのまま写した様なものではありません。オリジナルにある電池の残量や温度変化によって音色が変わってしまう弱点は克服され、後に接続される機器とのマッチングを向上させるためにOn/Offの切り替えが可能なアウトプット・バッファーを追加。また、先述の電池残量(電源電圧)での音色変化を意図的に再現する3段階のミニスイッチも装備しています。
▲Bossが主宰するオンライン・トークセッション“Talk with Boss”にて。写真左はBoss 社長でありエンジニアでもある池上嘉広 氏
TB-2Wの現物を実際に弾いてみた私(CULT 細川)としては、まず過去に作られたほぼ全ての量産型Tone Benderリプロダクション・モデルと全く異なるクオリティであることに驚きました。語弊を恐れずに言えば、“ブティック・ペダルの音”であると感じます。さらに端的に言えば、D*A*M、Jerms、Castledineなどのように、ヴィンテージペダルの研究を重ねた結果に少数生産されるようなペダルの質感に近く、大味なTone Benderとは対極にある、非常に繊細な質感です。
おそらく多くの人が疑問に思っているであろう、「ヴィンテージのProfessional MK.IIに近い音か?」という事に対する、この文章を書いている私の答えは、「近い音である」です。ただし、オリジナルとブラインドテストをして判断がつかないといったことではなく、ヴィンテージのProfessional MK.IIにある重要な質感がちゃんと再現されている、ということなのです。主観的であり、抽象的ですが、Tone Bender Professional MK.IIに求める弾き心地(ピックに対する食いつき、コンプ感、程よくかかるゲート、フィードバックのし易さなど)というものがあり、他の多くのリプロダクションがその要素を再現できていない中、TB-2Wはそれを再現できているように感じます。加えて、オリジナルより利便性と耐久性に優れ、さらにオリジナルには無い機能、そしてオリジナルよりも長けたギターボリュームへの追従性を具えています(オリジナルのProfessional MK.IIはギターボリュームへの追従性が良いわけではありません)。ヴィンテージ・フィーリングを具えたTone Bender Professinal MK.IIのリプロダクションの中で、史上最高の利便性と耐久性を持ち、決して安価ではないながらもコストパフォーマンスに長けたモデルであることは間違いありません。
CULT 細川