真っ当に独自の世界観を突き進む、日本は名古屋が誇るオルタナティブギア・ブランド“ELECTROGRAVE”。CULTが同ブランドにオーダーして初めて生まれた、新たな音表現のための新たなステレオ音響機器、それがSUPERPOSERです。
SUPERPOSERの基本的な特徴として、独立した2チャンネル・ステレオ仕様であることが挙げられます。正面から見て左半分と右半分、それぞれ【L ch】と【R ch】に分けることができ、それぞれのチャンネルを個別に出力することが可能です。L ch側のOUTPUT端子のみを使用すれば、両方のチャンネルの音がミックスされた状態でモノラル出力され、1つのアンプ、スピーカーなどで使用できますが、ある程度の距離を保った2つのスピーカーで使用することで本機器の能力、魅力をさらに強く理解できると思います。
各チャンネルには同じくELECTROGRAVEのノイズ生成器“QUAD OSCILLATOR”と同じ方式のオシレーターを4つずつ搭載し、計8つのオシレーターの音を重奏することがSUPERPOSERの基本的な使用方法であり、モデル名にある “SUPERPOSE= 重ね合せる”の意味が示す通り、複数の音を重ね合わせて、新しい音を作ることがこの機器の基本的なコンセプトです。
8つのオシレーターには独立したOn/Offスイッチ、そして音程を操作するFREQUENCYコントロールが装備されています。8つのオシレーターは全て同じものであるため、使用するオシレーターの数を増やせば、その分だけシンプルに足し算的な音の合成が可能です。もちろん、その逆も同様です。
それら8つのオシレーター、そしてそのオシレーターにある機能を駆使し、左右のチャンネルの音を様々な形で“干渉させる”ことで、SUPERPOSERは真価を発揮します。ほんの僅かに音程がズレた音を2つのスピーカーから出力し、それらの干渉、共鳴で生まれる音の揺らぎは、例えば2匹の虫や動物の鳴き声が共鳴して揺らぐように、太古から自然界にあったであろう原始的な効果でありながら、むしろそれ故になのか、興味を強く掻き立てられます。その原始的な揺らぎは距離を持った2つのスピーカーで使用してこそ解りやすいため、ステレオでの使用を推奨しています。
そして両チャンネル共通、全オシレーターに作用するエフェクト“FILTER”、“STABILITY” を装備。FILTERはその名の通りのフィルター的効果で、広い周波数帯域にかけて作用します。STABILITYはモジュレーション的な効果であり、そのモジュレーションの周期を決定するRATEコントロールを装備しますが、シンプルな音量の揺れや、コーラスやフランジャーのようなものではありません。“周期的に音を不安定にする”といった効果がSTABILITYエフェクトであり、オシレーターのセッティングによって様々な予測が難しい効果を発揮します。ステレオでの使用により、その効果もより解りやすいものとなります。
L ch、R chそれぞれにはマスターボリューム(“LEVEL”コントローラー)、音量をゼロにするいわゆるキルスイッチがあり、省サイズであることも含め、ライブパフォーマンスなどの演奏環境にも対応します。STABILITYエフェクトや音の共鳴を駆使すれば、リズムすらも作ることができるでしょう。
このSUPERPOSERは、音質が全く同じである8つのオシレーターの合成、それらの音程の操作のみながら、使用者の考え次第で全く新しい音楽を作れる機材であると断言できます。新しい音楽を作るための操作性を実現するため、各ノブとスイッチの配置、機能の厳選に議論を重ねました。
設計者であり、ELECTROGRAVEを牽引するKaz Koike氏は、このSUPERPOSERの音を“半導体の絶叫”であると評します。しかし、半導体を絶叫させると、身体中の血管から血が噴き出るかのように、回路の様々な箇所に電流が溢れ、予期せぬ動作をしてしまうため、それを制御するために数ヶ月を要し、発表延期を繰り返しました。その成果として生まれた新たな素晴らしい楽器、このSUPERPOSERをぜひお試しください。
CULT 細川
9VDC 35mA以上の電源で使用可能。電池には対応していません。