MXR Phase 90、Electro Harmonix Bad Stoneなどと並び、フェイザーペダル創世記を築いた隠れた名品、Musitronics Mu-Tron Phasor。Musitronicsのフェイザーと言えば、まずBi-Phaseを思い浮かべる方が多いと思いますが、1973〜74年の世界最初期フェイザーペダル群の中で頭一つ飛び抜けたエフェクトの太さ、ノイズの少なさを持つこのMu-Tron Phasorにも要注目です。
フェイズ・ステージの数はPhase 90、Small Stoneなどと比べて2ステージ多い、OTAを使用した6ステージ。MXRで言うところのPhase 100と同等で、
エフェクトは広いレンジにしっかりと掛かります。しかし、フェイジングの波がスムースであるため、使い心地はPhase 90のように自然です。“エフェクトは深いのに自然に聴こえる”、つまりはフェイザーの理想形のひとつと言えるはずです。6
ステージ・フェイザーの中ではトップクラスの使いやすさです。コントロールはフェイジングの速さを調整する“SPEED”に加え、フェイジングの波の大きさを3段階(Low、Middle、High)で決める“DEPTH”の2つ。DEPTHは連続可変では無いため、実質的には1つのコントロール+αのような操作感となり、その点もまた使いやすさに寄与しているでしょう。シンセ畑出身のマイク・ビーゲルによる設計だけあって、回路から音色まで、総合的に優れたプロダクションであると感じます。
今回入荷した個体は1976年製。基板上の電源部の周りにわずかなメンテナンス跡がありますが(抵抗が2つ交換)、フルオリジナルにかなり近い個体です。個体として、特にフェイジングの波形が綺麗で、自然な音色。まさにリッチなフェイザーサウンドのお手本的な個体と言えるでしょう。本体自体が大きいことが玉に瑕ですが、シンプルに良いフェイザーをお探しの方には非常におすすめです。100Vでも動作しているように見えますが、117Vでの使用を強く推奨します。レンジの広さ、エフェクトの深さが段違いです。