非常に珍しいGuyatone初のエフェクター、FS-1 Buzz Boxが入荷して参りました。広くは知られていませんが、Ace Tone FM-1 Fuzz Masterと並び、1967年に発売された日本最古の部類に入るエフェクトペダルです。
その外観から容易に想像ができる通り、このFS-1はTone Benderのコピー品です。しかし、そのコピー元は著名なProfessional Mk.IIではなく、多く流通したEME(JEN)製のVOX V828でもなく、1966年にイギリスで限られた数だけ流通したSola Sound Tone Bender Mk.1.5を元にしたであろうことが、回路やノブの配置から窺えます。昭和42年という旧き時代に、イギリスで撒かれたTone Bender Mk.1.5の限られた種子が、遠く離れた極東の地に届いていたということには、ただただ驚くほかありません。
Tone Bender Mk.1.5の回路はFuzz Faceに酷似しているため、それを元にしたこのFS-1もやはりFuzz Face系に属すファズペダルとなります。松下電器製のゲルマニウムトランジスタ“2SB175”を2石使用し、まるでオーバードライブの延長線上にあるような、オーガニックな質感のファズサウンドを奏でます。逆にファズでありながら歪み量はさほど多くなく、Tone Bender Mk.1.5を元にしたということにも合点がいくようなサウンドです。
もちろん、Fuzz Face系の特徴であるギターボリュームへの追従性もしっかりと受け継いでいます。Attack(歪み量の増減)コントロールが大きく上がっていたとしても、ギターのボリュームを絞れば太いファズサウンドに代わってクロスフェードしてくるかのように、自然な音色のクリーンサウンドが現れます。シリコントランジスタを使ったFuzz Faceにあるエンハンスされたクリーンサウンドも十分に魅力的ですが、このあくまでも“自然なクリーンサウンド“を作り出せるということは、優れたゲルマニウムFuzz Face系のファズが持つ特権と言えるでしょう。
イギリス製のTone Benderにあるような色気、ある種のクセは少なめですが、十二分にヴィンテージの雰囲気を残した、ゲルマニウム・Fuzz Face系のファズとして十分に魅力的な音色です。
全体的に色褪せ、汚れ、細かな傷はありますが、奇跡的に内部はフルオリジナルのまま、正常に動作いたします。Attackコントロールにガリはありますが、それもわずかなものであるため、現状のままお使いいただけると思います。
2つのノブは交換されている可能性がありますが、残念ながら断言ができません。当時の使用説明書には同じノブを搭載した個体の写真が掲載されているようにも見えますが、写真が不鮮明であるほか、同ノブは現在も入手が可能です。また、別のノブを搭載したフルオリジナルの個体も複数存在します。2つのノブのみ、オリジナルか否かの保証ができないこと、誠に心苦しいながらご了承くださいませ。
数ある国産ヴィンテージペダルの中でも、特に入手が難しい逸品です。何より、日本最古のものであるという甚大な歴史的な価値を宿したペダルです。ぜひ、この限られた機会に手にしてください。