非常に珍しいファズペダルが入荷して参りました。フィンランド発、Mad Professor Fire Red Fuzz(以下、FRF)のプロトタイプ、本来は出回ることのない試作品の1台です。
製品版のFRFはディストーションに近いファズであり、ファズでありながら非常に扱いやすいことが大きな特徴であるかと思います。しかし、このプロトタイプはしっかりとファズらしい個性があり、製品版よりも明らかにヴィンテージ感の強い音色です。
基本的な回路は製品版と大きく異なることはなく、コントロール類も製品版と同様のVolume、Tone、Fuzzの3つとなります。
設計者は同ブランドのSweet Honey OD、Mighty Red Distortion、Forest Green Compなどの傑作を輩出したことで知られる鬼才、Bjorn Juhl(BJF)。このFRFのプロトタイプもその界隈からの放出品となり、出自もしっかりとしております。Bjorn Juhl本人が作ったものかどうかは不明ですが、基板部に使われているパーツはBJFEと共通するものが多く、そのエッセンスは十分に含まれていると感じます。
このプロトタイプのFRFを一言で表すとすれば、「Big Muff + Tone Bender MK.II」というものに近いように思います。回路の大まかな構造、そしてToneコントロールがBig Muffと近いため、出力される音域としてはBig Muffに近く、そこにTone Bender Mk.II的なザラつきと荒れ、解りやすいファズ要素が足されたような印象です。逆に製品版はよりBig Muffに近い印象があります。非常に主観的ですが、このプロトタイプのファズとディストーションの良い点をうまく両立したような音色の方がよほど製品版よりも魅力的であり、むしろこのまま発売した方が良かったのでは、とすら思います。同系のファズとしては珍しく、前段にバッファーなどを置いてもキャラクターが破綻しないことも特筆すべき点です。
しかし、プロトタイプらしい欠点もあります。Fuzzコントロールが最大値に近い付近では発振してしまうのです。1969〜1972年製のFuzz Faceの一部にも見られるような高周波の発振ノイズで、弾いている間に気になるほどのものではありませんが、製品版では見られない弱点と言えます。この弱点こそあれど、モダンな使用感にヴィンテージ要素をうまく取り入れた、秀逸な一台であると言えます。もちろん、世界に何台もあるものではありませんので、ぜひお見逃し無く。